Creating Change Conferenceのエチケット
Creating Changeとは?
「セクシュアルマイノリティと医療福祉教育を考える全国大会2020」のプレ企画3では、Creating Change Conforence という全米最大のLGBTQの全国大会に参加した報告をさせていただきました。私がこの「セクシュアルマイノリティと医療福祉教育を考える全国大会」を再開させたいと強く思うようになったきっかけでもあります。これだけ急劇にLGBTQの待遇が変わった社会は世界でも北アメリカが抜きんでていると言えるでしょう。その背景には、黒人の市民権運動や女性参政権などシビルライツムーブメントに学び、全国で力強く展開したLGBTQアクティビズムがありました。その中心にもなったのが、このCreating Change Conforence なのです。
今回は、プレ企画で紹介できなかった、プログラムに毎年掲載されてはアップデートされていく、グランドルールやエチケットガイドラインについてご紹介します。イベント開催やグループ運営で参考にしてもらえたらと思います。
バイセクシュアル/パンセクシュアル/流動的な人に対するエチケットガイド
「ゲイの人権」や「同性婚」という言葉ではなく、「平等な権利」や「結婚の平等」などの包括的な言葉を使う。
バイセクシュアルの否定的なステレオタイプに疑問を投げかける。
バイセクシュアルはよく、不可視化されたり、非合法と見なされることを認識する。彼らは何度もカムアウトせねばならず、時には同じ人にカムアウトすることさえある。
プライバシーと境界線を尊重する。質問する前に少し思いとどまり、その質問の背後にある思い込みに気づく。
バイセクシュアルの人々も、就職、健康、結婚、移民、親権、子どもの養育権や養子手続きなどで、ゲイやレズビアンと同じように差別や障害に直面することがあると認識すること。
自分の持っている「バイセクシュアル特権」という思い込みに疑問を抱く。調査では、バイセクシュアルはゲイやレズビアンなどと比べてより強いスティグマに見舞われている結果がでており、それを認識する。
バイセクシュアルの人々は、全ての性的指向の中で最も性的暴力に晒されている割合が高いこと、貧困率が高いこと、また、ゲイやレズビアンと比べると精神・身体的健康に格差があることを認識する。
トランスジェンダーのバイセクシュアルは、バイ嫌悪とトランス嫌悪のどちらもを経験する。生涯に渡って、暴力に晒されたり、貧困、不健康である割合が高いことを忘れないこと。
恋愛の関係性は、セクシュアリティとは独立していると認識すること。すべての関係性、モノガマスであれ、ポリガマスであれ、あらゆる関係性に肯定的であるように。
トランスジェンダーやジェンダーノンコンフォーミングの人や、そのパートナーは、バイセクシュアルのラベルを捨てて他の名前を名乗るべきだと主張しないこと。
トランス嫌悪やトランスを包括的に考えない人がバイセクシュアルのラベルを使うと思い込まないこと。それは、トランスの人でバイセクシュアルの人を消すことになるため。
誰かのセクシュアリティを完全に理解できないこともある、ということを受容すること。わからなくても大丈夫。
トランスジェンダー/ジェンダーノンコンフォーミングな人に対するエチケット
●性別人称
その人が意図している性別表現に気を配ってください。しかし外見からはその人の性自認は分からないことも忘れてはなりません。誰かの性自認を身体や声行動から知ることはできません。
性別を示す言葉を使う前に「どの性別人称を使いますか?」「あなたはどういうアイデンティティですか?」などと丁寧な言い方でたずねましょう。もしそうしたことを聞く時間がない場合は、その人の名前あるいは性別を使わない呼び方で、例えば「赤いシャツを着ている人」など女性・男性を使わないようにしましょう。
その人が呼んで欲しい名前で呼び、その人の望む性別人称でその人に使いましょう。
人の性別は変わるかもしれません。もし前会ったことがある人で前と違う性別表現をしている場合、その人に性別人称について丁寧に尋ねてみましょう。
もし誰かの性別人称を間違った時は、シンプルに訂正して次にいきましょう。間違いを正当化しようとしたり、しつこく謝ることはやめましょう。
●インクルーシブなトイレ
トランスジェンダーの人たちのニーとして「ジェンダー包括トイレ」があります。この大会では教育的なポスターとともに設置しています。
多くトランスジェンダーの人たちは、トイレで大変不快な目に会うことからはじまり、逮捕や死に至るケースさえもあります。あなたがどのトイレにいるかにかかわらず、すべての人が安心してトイレが出来るように配慮してください。どのトイレを使うかは各自の判断に委ねられています。
ホテルのトイレのように、公共のトイレへのアクセスについてアメリカ各地で政治的議論が起こっています。「ジェンダー包括トイレ」は、誰もが性表現を監視されることなくトイレを使える環境を支援するものです。
トランスジェンダーの人たちのニーズや話に耳を傾けてください。しかし彼らのプライバシーや境界線を尊重してください。他の人に聞かないような質問をしないでください。他人の性自認や性表現を思い込みで判断しないでください。どのように彼らが呼ばれたいかを尊重してください。
本、インターネット、トランスジェンダーがテーマのワークショップなどを通じて、自分で勉強しましょう。トランス嫌悪の状況に対して適切に対応できるように、強力なアライになってください。トランスの人々から、そしてトランスの人々と共に学ぶアライは、トランスジェンダームーブメントを成功させるために、非常に重要な存在です。
エイセクシュアル/エイロマンティックスペクトラムの人に対するエチケット
●エイセクシャル
性的な指向を持たない/少ないこと、あるいは性的な接触の欲望がない/少ないことと定義されています。
エイセクシュアルの厳密な定義に沿っていない人だとしても、その他の性的指向と比べてエイセクシュアル的な感覚や経験を持っているという人もいます。
それぞれのエイセクシャルの人たちは、性的興奮、魅力の感じ方、関係性の作り方などについて、それぞれ違った風に経験しており、エイセクシャルコミュニティには本当に多種多様な在り方があります。
エイセクシャルのスペクトラムに沿った彼らのアイデンティティに基づいて誰かの行動や生理学を結論づける事は不可能です。
エイセクシャルのスペクトラムには多くの追加のアイデンティティがあります。グレイセクシャルやデミセクシャルです。
●グレイセクシャル
エイセクシャルとセクシャルの間と言うことです。とても低いあるいは頻繁ではない性的魅力、性的欲求かもしれないし、行動に起こすほどでもないかもしれないし、あるいは特定の状況のみ性的なことを感じるなど、様々です。
●デミセクシャル
強い感情的なつながりを持つ前に、性的な欲求を持ちません。例えばロマンチックあるいは、クィアプラトニックな関係を持ってから、性的な魅力を感じるというものです。
●恋愛的指向(ロマンティックオリエンテーション)
エイセクシュアルの多くの人たちが、恋愛感情を持っていると自認しています。他者にロマンティックな魅力を感じるということです。これは、性的な欲望とは違うものです。性的な欲望がなくても、ロマンチックな感情を持っている人もいるということです。例えば、バイロマンティック、ヘテロロマンティック、ホモロマンティック、パンロマンティックなどと言います。多くの人の場合、例えばバイセクシュアルならば、男女にロマンチックな魅力と性的な魅力を感じると言ったように一致していますが、異なることもあり得ます。
●エイロマンティック
恋愛感情を持たない、持ちたいという欲望が少ないことを言います。これもエイセクシュアルと同じように、幅広いスペクトラムになっていて、様々なレベルの恋愛感情があり、グレイロマンティック、デミロマンティックなどもあります。エイロマンティックの人たちは、LGBなど性的指向を持った上で、自称する人もいれば、単にエイロマンティックと自認する人もいます。
●すべきこと
エイセクシャルやエイセクシャリティが存在すること、そしてそれらは頻繁にないものにされたり、正当なアイデンティティとみなされないことがあることを知る。
性的指向について話すときエイセクシャリティも含めること。
エイセクシャルやエイロマンティックの人々の否定的なステレオタイプに疑問を持つこと。
「セックスや恋愛関係は全ての人にとって本質的に良いものだ」とか「セックスと恋愛は常に共にあるべきだ」という考えを疑う。
エイセクシャルやエイロマンティックの人たちは、その他のクィアなアイデンティティとよく重複していることを認識する。
エイセクシャルの人そしてエイロマンティックの人々の親密な関係や彼らの関係性を構築するやり方は様々で重要であり、たとえセックスやロマンスを含めないとしてもそのあり方を尊重すること。
●すべきでないこと
エイロマンティックの人は感情がない、または愛することができないと思い込むこと。(エイロマンティックの人たちは感情豊かに生きており、恋愛関係ではない他者との深いつながりを持っている。)
エイセクシャリティと禁欲主義を混同すること。禁欲主義は行動であり、セクシャリティは性的指向。
エイセクシャリティやエイロマンティックが本当の性的指向かどうか疑問を持つこと。
エイセクシャルの人が異性愛者であると思い込むこと。
エイセクシャルの人にマスターベーションをするかどうか聞くこと。
エイセクシャルの人たちに他の人に聞かないような、性的な活動や性経験について聞くこと。
「あなたは単にいい人にめぐり合ってないだけだ」またはLGBTであることを隠しているだけだ」と言うこと。
エイセクシャルを調べた調査では全体の3分の1がトランスジェンダー、ノンコンフォーミング、ノンバイナリー、エイジェンダー、ジェンダークィアの人たちだった。また、51%がエイロマンティックスペクトラム上にいるとされ、38%がバイロマンティックまたはパンロマンティックだった。
アクセシビリティについてのガイドライン
使ってはいけない差別的言葉がある。障害者同士でその言葉を使っていたとしても、健常者が使ってはいけない。LGBTQコミュニティで使われるオカマやクィアと同じ。
障害とともに生きている人は、その存在が私たちを「勇気づけるもの」でも「憐れなもの」でもどちらでもない。障害は身近なものだ。
誰かを助ける前に、助けが必要か聞くこと。
ガイド犬などを使っている人に会っても、勝手に犬をなでたり餌をあげたり、いかなる形であっても関与すべきではない。その存在に言及しないことによって、その人が自立して大会に参加していることを支援しよう。
誰にでもわかるように、適度な声の大きさ、速さで話そう。積極的に耳を傾け、質問をしよう。
通訳を通じて話す場合、通訳に向かってではなく、本人にむかって話しかけること。
多くの障害を持つ人が大会に参加している。障害は、学び方、理解の仕方、コミュニケーションの仕方に影響を及ぼす。自分と違う方法で学び、理解し、コミュニケーションをする人に対して寛容さや忍耐力を持つこと。障害があるからと言って勝手な思い込みを持たないこと。コミュニケーションが難しい場合、書いたり、やってみせたりして、別の方法を試そう。
フラッシュライトはてんかんやその他の状態の人のトリガーになる可能性がある。公の場でのカメラフラッシュの使用は避けること。
会場は前方、後方ともに障害者の人のためのスペースが用意されている。必要に応じて移動ができるように心がけておくこと。
スムーズな会場移動を確保するため、廊下でたむろしたり立ち止まって交通のさまたげになるようなことはしないこと。安全にみんなが移動できるよう注意すること。大きくて重たいドアは開けておくこと。
匂いに対するアレルギーや症状を持っている人がいるため、セントフリー(無臭・香水などをつけない)で参加して欲しい。また、シャンプーやスキンクリームなど、匂いが強いものの使用は控えてほしい。もしそうした製品を使用している場合は、「無臭ゾーン」には近づかないようにすること。
喫煙は既定の場所にて行い、喫煙後は無臭ゾーンには近づかないこと。
自分の思い込みを疑うこと。目に見えない障害もある。誰にでも、批判されたり尋ねられたりせずに設備を利用する権利がある。
支援が必要な際、障害者の人たちの要求や話を聞くこと。しかし不必要にプライベートな質問などをしてプライバシーや境界線、尊厳を脅かすようなことはしてはいけない。障害者の人は日常的に興味本位な視線で見られ扱われている。知りたいことは自分で調べて本人に聞くのは避けること。
そうした学びを通じて、日ごろの健常者至上主義の中で、障害者のアライになってほしい。
グランドルール「ポジティブな環境を作ること」
この大会は、LGBTQコミュニティとアライのためにポジティブな環境を作ることを表明する。
より強いムーブメントを築くために、参加者の皆さんには、ここで多くのことを学び、全米から集まる素晴らしい人々に会い、語り合い、互いにつながっていってほしいと思っています。
お互いに尊厳を保ち、積極的な場を保つためにすべての人に下記のことを覚えておいてほしいです。
●この大会には二つの原則があります。人権と団結です。セクシュアルハラスメントやあらゆる形の暴力は、そのふたつに対する脅威です。嫌がらせ、暴力、偏狭さは、恐怖や羞恥、不快感を生みます。それらはひとりの人から他者への力関係や優位性の表出です。時には、私たちの意識していない言動でさえ他者に不快感を与えることがあります。
・性的嫌がらせは、性的暴力です。性的嫌がらせや性暴力はあらゆる望まない性的な事柄など下記が含まれます。
容姿や個人生活について言及すること
望まれていないナンパや口説き
攻撃的な文章、落書きや貶めるような写真などの視覚的な描写
本人の許可なく体に触れること
望まれていない性的な要求、プレッシャー、誘い、性行動の依頼
個人の体型や服装についてのあからさまなコメント
性的な暴言、誹謗中傷
性的な接待で見返りをえること、性的接待を拒否したことで見返りを与えないこと
性的暴行、レイプ、性暴力
●多くの参加者が大会中に、ネットワーキングをしたり、性的な関係を持ったりする。もしあなたがセックスをしようとしているなら、私たちは合意形成が最重要だと言いたい。安全に楽しんでください!
私たちは、素晴らしく多様なLGBTQとアライが性的指向、性自認、性表現の多様な在り方が歓迎される場所であるこの大会に参加しており、そうしたイベントを主催していることを誇らしく思っています。LGBTQ、アライ、家族などすべての人がこの場に歓迎されていて肯定されていることを確かなものにするためには、個々人に責任があります。
すべての参加者がこの大会の家族のように感じ、安心し安全を感じる空間にするために、ご協力くださり、ありがとうございます。もし性的暴力や嫌がらせ、脅威を感じることがあれば、受付やロビー階にいる大会実行委員までお知らせください。
エチケットは、新設Cチーム企画がCreating Change Conferenceに許可を得て翻訳し紹介しています。
転載ご利用の際は、Creating Change Conferenceと新設Cチーム企画訳のクレジットを記載してください。