実験!偽カムアウト
大学生427人への調査
偽のカミングアウトをしてレポートを書いてもらう課題を行ったのは、2010~2013年の4年間、関西学院大学のヒューマンセクシュアリティという武田丈先生の授業です。この授業は毎回セクシュアリティの専門家や当事者がゲストで話をするという内容の濃い科目です。私たちが担当する回はコースの中盤でしたので、学生がセクシュアリティについての理解をある程度深めており、この課題を課すのに耐えうると判断して行っていました。
負荷が大きく、自他ともに危険が伴う課題ですし、LGBTQ当事者の学生もいるので、偽カムアウトの体験レポートと、普通の調べもののレポートの2つから選べる課題にしていました。実施の際は、自分たちのカミングアウトの経験談を語り、緊張感や不安がどんなものか想像をうながしたり、実際に行う際、カミングアウトする相手が本当にLGBTQである場合も想定して行うようにと伝えていました。
様々な立場の講師からセクシュアリティ・ジェンダーについて学ぶことによって「実際にLGBTQの気持ちや状況を理解するために偽カムアウトをやってみる必要がある、やってみよう」という動機を学生たちに持たせることができたのは、このプログラムの全体の構成がよくできているからだと思います。
結果、多くの学生が偽カミングアウトにチャレンジすることを選択したことには驚きました。多くの学生がLGBTQではないのにもかかわらず、LGBTQ当事者と全く同じような緊張、不安、パニックなどを体験していることはとても興味深いです。細かい集計はPDFをご覧ください。(当時集計とかコメントとかけっこうがんばってたなーって思う。)
下記が当時の課題内容です。
【A】【B】のうち、どちらかを選択して課題とする。
【A】家族または友人に「自分は同性愛者である」と偽のカミングアウトをすること。
偽カミングアウトができた場合、
(1)自分がカムアウト前後にどのような心境になり、感じ考えたか
(2)家族または友人がどのような反応をしたか
(3)体験を踏まえLGBTが生きやすい社会にするため自分に何ができるか
1500字以上でまとめる。
偽カミングアウトができなかった場合、
(1)できなかった理由
(2)他のマイノリティ(例えば在日、部落、精神疾患、原発付近で育ったなど) の場合ならできたのか、その理由を同性愛の場合と比較し自分の持っている偏見はどのように作られてきたか考察する
(3)自分が持っている偏見をなくす解決方法は何か
1500字以上でまとめる。
なお、偽カムアウトの相手がたまたまLGBT当事者である可能性も想定しておくこと。
【B】下記の二つのどちらとも答えること。
1。LGBTIが、医療・福祉の利用者となるとき、どのような困難に遭遇するか、具体的な例をあげた上でその解決方法を考察すること。1000字以上。
2。世界の30ヶ国以上で同性婚や同性同士のパートナーシップを保障する制度がある。同性婚とパートナーシップ法はどのように違うか、またその違いの背景にはどのような考え方があるか調べて1000字以上でまとめること。